挨拶の歌と構造化

音楽療法

こんにちは。
音楽療法士の玉榮奈津美(たまえなつみ)です。

突然ですが、「構造化」とは何でしょう?
AIによると「物事の全体像をわかりやすく定義し、その構成要素と関係を明確にすること」と出てきます。
(便利な世の中になりましたね~笑)

クライエント(対象者)によって、または、即興演奏をベースとするセッションの場合は異なりますが、音楽療法では、ある程度プログラムを構造化していることが多くあります。
イメージとしては、
始まりの歌→活動①→活動②→活動③→終わりの歌
という感じです。

日常の中でルーティン化されている行動も、ある種、決まった枠組みの中で流れに沿って行動している、という見方ができます。
例えば、
起床→トイレで用を足す→歯磨きをする→顔を洗う→着替える→朝食をとる
などがそうですね。
人によって上記以外の行動が含まれていたり、順番の流れは異なっているかと思いますが、時間や行動が決まっているからこそ、難しく考えることも行動を起こすことに不安を感じることもなく、自然にスムーズに行える行動がルーティンとも言えるかもしれません。

人は見通しが持てない状況・環境では不安を感じるものです。
そして、「知らないこと」に対して恐怖心・警戒心を持つようにできています。
逆に言えば、「知っていること」「見通せること」であれば安心感があるということ。

そこで、音楽療法でも心理的不安を軽減するために、ある程度プログラムを固定化・構造化するのです。
「ある程度」と表現したのには理由があり、ガチガチに固めてしまっては、クライエント(対象者)の表情や動き、声や音など、様々な表出や変化に臨機応変に対応できるだけの余白を残しておくためです。
音楽療法は、クライエント(対象者)が主役ですからね。

私が事業所で実施している音楽療法もなつみかんの音楽療法でも、ゆるく活動プログラムを構造化しています。
[固定]始まりの歌(挨拶・お返事)
[固定][活動①]スキンシップ ※低年齢児の場合
[活動②]例:手遊び など
[活動③]例:運動遊び など
[活動④]例:楽器遊び など
[固定]終わりの歌(さよなら)

このように枠組みが決まっていると、1歳のお子さまでも3回目くらいからは始まりの歌で「音楽が始まるな」と感じ取ってしっかりこちらに注意を向けたり、「始まることへの意識付け」ができるようになります。
また、始まりや終わりの歌をきっかけに、他者に注意を向けること、自己への意識、呼名されて応答すること、自然に挨拶を身に付けること、歌→発語への意識に繋がるなど、お子さまによっては思いがけない変化が見られることもあります。

上記のように活動プログラムを組んでいても、活動②~④はお子さま達の状態によって順番を入れ替えたり、時には活動内容自体をガラッと変えたりしていますが、既にある程度見通しが持てている状態のため、お子さま達が変更に伴うパニックや癇癪を起こす姿はほとんど見たことがありません。
それほど「見通せること」「いつもと同じ安心感」は大事なことであり、意図を持って構造化しています。

保育園や幼稚園などで一日の流れがある程度事前に提示され、基本的に決まったスケジュールで動いているのも同じですね。
だからこそ、お子さま達は安心して楽しく過ごせるわけです。